久しぶりのデート。
久しぶりのデート。
昨日の夜から小雨が降っているけど、今日の予定はプラネタリウムだから大丈夫。
僕は心を弾ませて、予定の時間よりも少し早めに家を出る。
でも、僕が校門前に着いた時には、もう彼女の姿がそこにあった。
「おはよう、舞」
「......芝村に挨拶はない。今日はどこへ行くのだ?」
相変わらずな返事に、僕はぽややんと笑って彼女の手を取った。
「今日はプラネタリウムだよ」
今月の上映プログラムは夏の星座の物語。
有名な彦星と織姫、そして橋渡しをする白鳥の話だった。
味気ないテープの解説を聞きながら、僕はぼんやりと考えていた。
もし舞に一年も会えないなんて事になったら、きっと誰かの橋渡しなんて待ってられない。
どんな手段を使っても、絶対に会いに行く。
邪魔をするようなモノがあれば、排除する。徹底的に。
そんな事を考えていた僕の耳に、彦星が織姫の側を離れるようになった理由が流れ込んできた。
そこで、僕は万が一の可能性すらない事に気付いて、思わず苦笑する。
『怠惰』
この二文字を舞が許してくれる訳がない。
ちらりと隣に座る彼女に視線を向けて、僕は小さく息を飲んだ。
舞は、まっすぐ、人工の星を見ている。
表情を全部消して、星を見ている。
ちょっとだけのつもりだったのに、彼女がそんな表情をする理由が気になって、じっと見つめてしまった。
その視線に気付いたのだろう。
誰にも聞こえないように、舞は、多目的結晶でメールを送ってきた。
『私の父は、星が好きだった。地上に落ちた堕天使が、いつも星を見ては、帰りたいと願うように。...それを思い出しただけだ。気にするな』
気にするな。なんて事、出来る訳がなかった。
上映が終わって外へ出れば、雨はすっかり止んでいた。朝の曇天が嘘のような青い空には薄く虹がかかっている。
僕は黙ったまま先を歩く舞を後ろから抱きしめた。
「なっ!」
突然の事に、舞は顔を真っ赤にして背中ごしに睨んでくる。
「大丈夫。周りに人の気配はないよ」
ちゃんと確認している。
彼女は自分の照れた顔が見られるのを、極度に嫌うから。
第一、舞のこんな可愛い顔を他の人間に見せるなんて、冗談じゃない。
「そういう事ではっ......」
「舞」
静かな僕の声に、彼女は動きを止めた。
「僕は君の側にいるよ。絢爛舞踏に、人類の決戦存在HEROになったとしても」
聞いた事がある。
その勲章を持つ者は、何故だか知られていないが行方不明になるのだと。
「世界中を敵に回したって、僕は君の側にいる」
頭の奥で危険だと警告する声が聞こえる。
これ以上彼女に踏み込めば、『普通』は手に入らないと。
それでも―――例え、誰かの陰謀だったとしても。
この想いは止められない―――