[ 高機動幻想 ガンパレード・マーチ ] それが世界の選択だから。
奇跡も未来もすべてここから。
奇跡も未来もすべてここから。
僕は何もいらない。
五月一日。
僕は朝からハンガーに篭っていた。
「厚志、ここにいたのか」
昼休みもハンガーで作業していた僕は、声に手を止め振り返った。
「舞、どうしたの?」
「授業にも出ずに、士魂号の調整か?」
「...いつ何があるかわからないからね。出来ることはしておくつもりだよ」
僕は少し目を伏せて答える。
残された時間はあと少し。休眠期に入るまでの十日間。
「厚志......」
「舞に怪我をさせたくないし」
僕はそう言って彼女の手をとった。
「あ、あつし!」
真っ赤になる舞に微笑みが浮かぶ。
僕の指が震えているなんて事を舞は知らない。
抱きしめる度に僕が怯えるように震えている事を、舞は知らない。
「舞は僕に触られるの、嫌?」
「そんな事はない! だが...その......なんだ...」
舞がしどろもどろになっている間に、僕は彼女を引き寄せる。
「君さえいてくれたら、僕は世界だって守れるよ」
そう言った僕の背中に、舞は諦めたようにため息を吐きながら腕を回す。
「...私が怪我をしただけで大騒ぎをするのにか?」
それは舞だから。
奇跡も未来もすべてここから始まる。
「約束しようか? 舞が僕の側にいる限り、僕は世界を守るって」
「悪くない取引だな。それは」
舞が笑う気配を感じる。
僕が必要だと言ってほしい。
君以外はどうでもいいんだ。
何もいらないのに、それでもきりがないほど君が欲しい。
一人の少女を守るために、世界を存続させるという契約を。