[ こんなにも青い空の下で ]

[ 高機動幻想 ガンパレード・マーチ ] それが世界の選択だから。
平和な事はいい事だ。

 五月の半ば。
「いい天気になってよかったね、舞」
 厚志は空に右手を伸ばしながら、隣の舞に笑いかけた。
「う、うむ...そうだな」
 舞は白いワンピースの裾をギュッと握っている。

 彼女がその姿で現れた時は、厚志でさえ数秒身体が動かなかった。
「に、似合わぬか?」
 舞は顔を赤くして、俯いている。
「.........」
 一方、厚志の方は無言で舞をじっと見つめていた。
「の、ののみが着ていけと...その......」
 そこまで言った舞は、玄関先でカダヤに抱きつかれる事になった。
「あ、あつし!」
 彼の腕に囲まれて、舞は耳まで赤く染める。
「すっごい! よく似合ってるよ」
「ば! やめんか!」
 ......というのが朝の顛末である。平和な事はいい事だ。

「それで、そのバスケットは何だ? 厚志」
 舞は厚志の左手に下げられているものが先程から気になっていた。
「これ? せっかくだから、サンドイッチを作ってきたんだ。前に舞も誉めてくれた、フルーツサンドも作っておいたからね」
「そうか! 厚志のサンドイッチは美味いからな」
 厚志の言葉に舞は嬉しそうに笑った。
 そんな彼女の笑顔に、厚志もぽややんと笑顔になる。
 こんな些細な事が、幸せに繋がっていく。

 草原でお昼ご飯を食べ終わった舞は、時折瞼が落ちてくるのを必死で耐えていた。
 日頃からの疲れと、満腹感で睡魔が襲ってきたのだろう。
 そんな彼女を見ていた厚志は、ぽやっとした笑みを浮かべて、とある事を決めた。
「舞」
「なんだ?」
 眠そうな舞を抱き寄せると、レジャーシートの上に転がった。
「な! ななななぬを......」
 彼女の頭は厚志の腕の上に置かれ、腰には彼の腕が回されている。
 舞が真っ赤になるのも仕方がない。
「いいじゃない、たまには。舞にだってお休みは必要だよ」
 厚志は腕の上にある舞の髪を優しく撫でた。
「こうして、僕が側に居るから。少し眠ったら?」
「......よいのか?」
「うん。もちろん」
「そうか......」
 舞はそう呟いて目を閉じた。
 微風が彼らの周りで踊るように流れていく。
 しばらく舞の髪を撫でていた厚志も、いつの間にか目を閉じていた。

 彼らはこれからも生きていく。
 最愛の人と共に。
 こんなにも青い空の下で―――――